藤村克裕雑記帳
2018-09-20
  • 色の不思議あれこれ106
  • 無人の古本屋の噂を聞いて三鷹まで見物に行ってきた
  •  知ってる? 無人の古本屋があるそうだよ、という話を聞いて、びっくりした。す、すごい! む、む、むじん!?
     畑の脇の道とかに、その畑でできた野菜などを無人で販売していることがあるのは、誰でも見たことがある、と思う。そこにあるものが欲しい人は、どこかに示された金額を空き缶とかの所定の“金庫”に入れて欲しいものを持ち帰る。それが野菜であれば、採れたての新鮮さが、どこかしら嬉しいものだ。つい、買いすぎたりもする。
     私の古くからの友人・松井利夫は、一時この無人販売に目をつけて、関西の各所、あげくは東京・青山でも、この無人販売の方法でタコツボを売る、という作品を展開していたことがあった。松井利夫とタコやタコツボとの話は、始めると長くなるので、今回はしない。しないが、今後何かの時に出ることがあるかもしれない。
     で、その古本屋であるが、試しに「古本屋 無人販売」で検索してみると、出た! その名は、「BOOK ROAD」。三鷹駅北口から徒歩10〜13分のところにあるらしい。ならば、とさっそく見物に行くことにした。
     新宿からの中央線・特快は快調に走って、すぐに三鷹。駅、北口から歩き始める。あいにくの雨模様。
     表に看板も何も出ていないこともあって、最初、見落として通り過ぎてしまった。しばらくして、さすがにおかしいことに気づいて、もう一度戻ったらあった。素通しガラスの引き戸から壁際の書棚と並べられた本が見える。
     中に入ると、スチール製7段の書棚6本、一番上と一番下の段は空っぽになっている。各段の左右それぞれに10冊弱が背表紙をこちらに向けて立てられ、真ん中にいわゆる面陳の一冊が配されているから、ざっと計算してお店全体で600冊くらい並んでいることになろうか。マンガ本やエロ本、実用書や小説や詩、というような本は見当たらない。“真面目な”本の棚である。緩やかな分類がなされて、一定の分野ごとに棚に配されているようにも見受けられる。価格は、とても良心的だと思う。
     書棚のない方の壁の方にはガチャポンの販売機が置かれていて、壁には本の買い方を説明するパネルが掲げられている。その壁際には木製の箱が底を上にして置かれていた。この箱は椅子の代わりだろうか? 今日は、その上に紐で縛られた本の束が二つ置かれていた。
     本の価格はシールに書かれている。価格は良心的である。指定の金額をガチャポンのコイン投入口に入れるとガチャポンが出せ、ガチャポンには袋が入っていて、袋はお持ち帰りに使えるのである。袋を取り出した後のガチャポンがたくさん箱に入っていた。これは、お客様がきて、本を買って帰った物証である。店主の演出とは考えにくい。
     私は、うーん、と唸ってしまった。唸りながらも、目は棚を走っている。なかむらるみ『おじさん図鑑』(小学館、2011年)を300円で買った。裏表紙の一部と本文60ページに、明らかに故八田淳氏(美術家)の姿が描かれていたからである。八田淳氏についても、いつかここに話が出るだろう。
     唸りながら帰ってきて、24時間営業のこのお店がすでに五年間続いてきている、と知って、さらに唸ってしまった。

    2018年9月15日、東京にて

    無人古本屋BOOK ROAD:https://www.facebook.com/bookroad.mujin/
                https://twitter.com/bookroad_mujin


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  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
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