藤村克裕雑記帳
2019-08-23
  • 色の不思議あれこれ140
  • 暑い夏 その3
  • ビニール製の「ポケット」に1973年の「点展」での布製の巨大な「ポケット」の写真が収められた作品がとてもいい、と思った。長さんの映像は全部を見ることができなかった。
     なぜなら、さらに南下して「小田原宿なりわい交流館」に移動し、その二階を訪れなければならなかったのである。太田曜・川口肇・水由章、各氏の実験映画作品を見たかったのだ。開始時間に間に合ったものの、なんとびっくりしたことか。
     そこは、冷房のない部屋だった!
     ムッチャ暑かった。が、三者三様の作品は、とても面白かった。
     今もフィルムにこだわって映画を作り続ける三人が、冷房のないスペースで、暗幕の代わりの布を自分たちで窓に張りスクリーンを準備し映写機を操作し座布団を並べ団扇や氷や冷たいお茶の用意までする。司会進行も資料の配布も全部自分たちでやる。
     観客は決して多いとは言えない。しかし、というか、だから、というべきか、作品は素晴らしかった。とりわけ、独特な方法で多重撮影し自分で現像したというフィルム自体まったく無編集の水由氏の作品。それが捉えていた光の多様な表情には本当に感動させられた。手元のノートにメモしながら撮影後フィルムを巻き取り、メモを見ながら撮影しメモをする、これを4〜5回繰り返して得たのが水由氏の作品だ。絶えず偶然が介入しているはずが、厳密な計算に基づいて厳密に作られているようにしか見えず、ものすごい完成度である。私は実に満足して帰路についたのである。あ、八田作品資料などの搬出もしたけど。
     ともかく、こうして小田原という街の自主企画の「ビエンナーレ」でいくつかの作品の現物に直接まみえる機会をこうして得て、作品に触れることができるのは他にかけがいがない、と確信したのだった。そうした機会=場を作り上げる労力がとても大変なのは理解しているつもりでいる。飯室氏に敬意を表したい。
     そして、蛇足を承知であえて述べておきたい。
     テロ予告めいた「脅迫」があろうが、“危ない”企画であろうが、やると決めたことはやる。「脅迫」に負けない態勢をも整えておく。それが展覧会を組織・運営すると決めた立場の者の責任というものであろう。
     見る側は、多少のリスクを抱えても(つまり時間とお金がかかるということだが)見たいものは見に行く。なぜか?
     現物を実際に見なければ始まらないからだ。こんな当たり前のことを書いているのが悲しい。
                            (8月22日、東京にて)

     ●小田原ビエンナーレ
    2019年7月31日~8月26日 https://rarea.events/event/59059
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  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
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