藤村克裕雑記帳
2020-02-19
  • 色の不思議あれこれ165
  • 火曜日の散歩 その1
  •  天気の良い火曜日である。
     朝9時半過ぎにテクテク最寄りの警察署の生活安全課に行った。
     先週、その警察署から電話があって、法律が変わるのでちゃんと手続きしないと3月いっぱいを過ぎるとあなたの古物商の“免許”が失効してしまいますよ、と言われた。それで、慌てて“出頭”したのだ。なにせ私は、古本屋も営む多角個人営業主。古物商の“免許”がなくなっては困ってしまう。毎年、講習会があるのだが、去年はその当日に熱を出してダウンし、欠席してしまった。欠席の届けを電話でした時、書類は郵送すればいいか? と尋ねたら、あなたがちゃんと警察まで持って来なさい、と言われていたのだった。それを完全に忘れてしまっていた。おまけにもう、書類のありかがわからなくなっている。どこかにしまい込んだのだろうが、全く思い出せない。叱られるのを覚悟して、でも、やっぱり恐る恐る行った。
     係の人は親切で、半ば呆れながらも色々教えてくれた。おかげで、書類も書けてそのまま提出できた。係の人は、これでもう大丈夫、と言ってくれた。

     帰路、通り沿いに行列ができている。見れば薬屋。開店を待っているようだ。ちょうど前の方が動き始めたところなので、好奇心もあって最後尾に並んでみた。箱入りのマスクを一箱ずつ持った人たちが出てくる。しずしずと私がマスク売り場に着いた時には、もちろん箱などはなく、数枚入りの袋が一つだけ残っていた。ちょっと迷ったけど、それを買った。消毒用のアルコールも探したが無かった。何かあると、あっ!という間に物がなくなる。それがわかっているのに、ひょっとしたら、と探してみる自分が情けない。

     一旦家に戻って、午後、都営新宿線・菊川駅から「無人島プロジェクト」をめざした。清澄白河から引っ越し後、初めて訪れる。「風間サチコ展」。
     ムッチャかっこいい。建物も内部も作品も。
     かつてはダンボール工場だったそうだが、長い間(三十年間だったか)使われていなかったという。置き去りにされていた機械類など7トン分を片付け、掃除し、さらに手を入れて現在のようにしたそうだ。専門家の力も借りた、と言うが、基本的に自分たちでやった、と「無人島プロジェクト」の人は教えて
  • くれた。さぞ大変だっただろう。大変でもこんなにかっこいい。報われている。
     建物の外観を写真で示す。が、中の様子は、どうか実際に訪れて体感していただきたい。
     風間サチコ氏の作品は、いつもながらの力技だが、旧作も含めた展示でバラエティにとんでいる。明らかにインスタレーションの要素のある作品もあった。
     聞けば、事前の調査は実に綿密に行われるという。今回は石灰岩、セメント、コンクリートという土木素材の変容、その素材のスイを尽くした黒部ダム、石灰岩の産地の武甲山、労働者などがテーマに取り上げられている。いつもながら、力強いノミ跡のキレが、重いテーマから観客の目がそれることを許さない。とはいえ、ユーモアをも感じさせてくれる。版そのものが作品に動員されているのも興味深い。版をフロッタージュすることも行われている。仕事を自在に揺さぶっている様子は、誠に頼もしい。今後も続くという発表が楽しみだ。
    つづく→
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  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
  • 元京都芸術大学教授。
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