藤村克裕雑記帳
2019-04-25
  • 色の不思議あれこれ130
  • 「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン」展
  •  櫛野展正(くしののぶまさ)という人の名をいつ覚えたのか、記憶にない。ないが、おそらく「鞍の津(とものつ)ミュージアム」(福山市)での「ヤンキー人類学」展についての新聞記事。見に行きたいなあ、と思ったがかなわず、その後、どこかの書店で『ヤンキー人類学』という本を見つけて、あ! と、さっそく買い求め、櫛野氏の名を知ったのだったろう。
     「アウトサイダー・キュレーター」の櫛野氏が取り上げるのは、「アウトサイダー・アート」。
     「アウトサイダー」よりもっと“激しい”のは「アウトロー」だけど、櫛野氏は死刑囚が描いた絵も取り上げる。もっとも、死刑囚がそのままアウトローかどうか即断できない。死刑囚が描いた絵については、以前渋谷で見た展覧会のことをここに書いたことがある。あの展覧会も櫛野氏が関係していた。
     櫛野氏は今「鞍の津ミュージアム」を離れて独立し、「クシノステラス」というギャラリーをやっている(そうだ)。「アウトサイダー・アート」の情報を得れば、ためらうことなくどこへでも赴いて、作者に会い作品を見せてもらう、話を聞く、という地道な活動を厭わない(らしい)。
     そんな櫛野氏の名をカンムリにした東京・後楽園での展覧会である。後楽園には東京ドームがあり遊園地がある。もちろん庭園もある。が、ギャラリーがあるのを知らなかった。不覚であった。
  •  会場では、いきなりモニタの映像と音声に迎えられる。何事かを喋り続ける若い男性。架空のお笑いユニットを次々に考案し、経歴、ネタなど詳細なディテールのデーターまで作って記憶しているというけうけげんさんの“立て板に水”の姿である。モニタ横には、けうけげんさんが広告用紙裏に描いたそれらお笑いユニットの“似顔絵”がびっしりと展示されている。は、なんで? という問いは無用だ。けうけげんさんは、モニタの中でいつまでもとうとうと喋り続けている。あ、ループの映像だった。
     後ろを振り向けば、いわゆる「デコトラ」を紙で作った精巧な立体造形物が複数の棚にびっしり、つまりムッチャたくさん並んでいる。それが、一台一台実に丁寧に作られているのである。伊藤輝政さん。‥‥。‥‥。無言にならざるをえない。もうのっけから、ノックダウンなのだ。おや、インをふんでいる。
     その先もずっと、次々に、あっけにとられ、クチあんぐりするばかりの展覧会なのである。
     甲虫をムッチャたくさん集めて作った稲村米治さんの「新田義貞像」がある。
     かと思えば、八木志基さんの怪獣やヒーローなどを鉄線の線描だけで描いた絵がある。このきちんとした構造や形状の重なりの表現は素晴らしい。
     ガムの包み紙の裏に描かれた精巧極まりない絵と明朝体の文字、大竹徹祐さんの作品だ。
     ‥‥。‥‥。‥‥。
     うーん、‥‥あとは実際に会場で実物を見ていただいたほうがよい。私の文章力では何も書けそうにない。そう、あきらめが肝心。
     展示作品の中には、あのダダカンこと糸井貫二さんのように既に有名な人の作品や、塙興子さんのようにプロの画家の作品も含まれている。東京造形大学入学者として最高齢という玉城秀一さんのジャコをびっしり貼り付けた“ジャコメッティの彫刻”にはそのあまりの事態に笑うことさえ忘れてしまったが、このようにダジャレをかます余裕の“アウトサイダー”も含まれている。
     総じて、「アウトサイダー・アート」の先入観からすれば、比較的おおらかな作品が選ばれているように見えた。櫛野氏のセンスといえようか。先入観が問題なのか。
     5月19日(日)まで。後楽園、ギャラリーアーモ。

    2019年4月21日 東京にて

    ●ギャラリーアーモ
    https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/

    ●会期:2019年4月12日(金)~5月19日(日)
    ※開催期間中無休
    【当日券】 大人(高校生以上)1,300円
    【前売券】 大人(高校生以上)1,100円
    【当日・前売一律】小人(小・中学生)200円


  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
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