とここまで書いてきて、久しぶりに『へたも絵のうち』(この言葉大好き!)を引っ張り出してきて、つい全部読んでしまった。なんか、いままで書いてきたことがちょっとむなしくなるくらい面白かった。最後にここから抜き書き。
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この頃は、私の昔の絵を持ってくる人がときどきいます。ほんとうに私がかいたのかどうか確かめにくるのですが、貧乏していたころの絵で、すっかり忘れてしまっていたのを、見せられたこともあります。その絵を見ながら「貧乏しなければかけない絵だな」と自慢したら、妻の方は「いい絵でもかかなければ、あんな貧乏した甲斐はないでしょう」といっていました。
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ふ、深い…。もうひとつ。
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二科の研究所の書生さんに「どうしたらいい絵がかけるか」と聞かれたときなど、私は「自分を生かす自然な絵をかけばいい」と答えていました。
下品な人は下品な絵をかきなさい、ばかな人はばかな絵をかきなさい、下手な人は下手な絵をかきなさい、と、そういっていました。
結局、絵などは自分を出して自分を生かすしかないのだと思います。自分にないものを、無理になんとかしようとしてもロクなことにはなりません。だから、私はよく二科の仲間に、下手な絵も認めよといっていました。
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うーん、まいったなあ。
(2018年1月21日 雪の東京にて)