そんなわけで、この展覧会で式場隆三郎という人の「正体」=活動のおおよそを知ることになった。展示されているのは主に資料類だとはいえ、たとえば木喰の現物『金比羅大権現』、木喰像の写真数点、中原悌二郎『若きカフカス人』、ロダン『花子』など、実に新鮮に見ることができる。
また、山下清の貼り絵の精緻さにも驚かされるだろう。こよりを作って貼り込んでいたことなどすっかり忘れていた。
式場隆三郎は山下清の貼り絵を持って全国を巡回して展示会を催したのだったが、ある資料にはその日程が示されていて、中に「1959年6月25日〜6月30日、帯広十勝会館」とあった。それで、また思い出したのだった。
小学生の私(たち)は先生たちに引率されてこの十勝会館(現存せず)まで学校から徒歩で移動し、押し合いへし合いしながら山下清の貼り絵の数々を見た。しかし、当時の私は今日のようにびっくりしなかった。ふーん、てなもんだったのである。あれから半世紀以上を経て、今度は本当にびっくり仰天したのだから、私も少しは成長できたのかもしれない。
でさらに、ゴッホの複製である。
複製で展覧会をやっただなんて、しかも大入りだっただなんて、なんだかなあ、、、(汗)、、、という“先入観”は、その当の複製群が見事に打ち破ってくれるだろう。「炎の人」というゴッホのイメージは式場隆三郎が作ったものだそうだ(知らなかった!)。“ゴッホ模様”の浴衣には苦笑させられたが。
それにしても、会場で配布されていた「出品目録(リスト)」の見辛いことと言ったら類例がないくらい。A3を二つ折りにしてA4にして8ページ仕立てにしたものが置かれていたんだけど、それだと当然冊子のように見て行くでしょ? なのに、1を開くと4が現れ、4の隣は5、それを開くと8、その隣は7、、、(汗)、、、私はすっかり混乱し、ああこれはA3の状態で表と裏を順番に見ていくんだ、と分かるまでしばらく努力を要したのだった。私が耄碌したこともあろうが、ここは、半分に折らないで配布するか、半分に折るならページの正常な配置にきちんとひと手間をかけるべき。そんなことはデザインの「いろは」だろう。美術館なんだし。二笑亭をめぐる造形物を会場に配することに手間をかけるのと同じくらい(というか、もっと)重要なことだと私は思う。
そんなわけで、どうせすぐ忘れちゃうし、耄碌も自覚させられたし、つい苦言を呈してクソジジイになっちゃったけど、とっても面白かった。
(2020年10月24日、東京にて)