藤村克裕雑記帳

色の不思議あれこれ146 2019-10-09

岸田劉生展を見た日 その1

やっと涼しくなった。それもあって、東京ステーションギャラリーで開催中の「岸田劉生展」に家人と出かけ、展覧会場に向かう前に、KITTE四階の蕎麦屋で簡単に腹ごしらえして、さて、とエスカレーターで下の階に降りながら「インターメディアテク」というのを家人が見つけた。え? あ、そうか。ここにあったのか。
 丸の内の東京中央郵便局が建て替えられてKITTEとなり、そこに東大博物館の収蔵品を中心にしたミュージアムもできた、というのは知ってはいた。しかし、ここ、とは思っていなかった。いかにも唐突に出くわしたのである。
 早速立ち入ってみると、ワニやらクジラやら、動物の骨格や剥製、魚の骨格はじめ各種標本、植物や鉱物の標本、鳥などの剥製、方程式とかから導き出されたらしき立体模型、蓄音機や計算機、実験のための機械、物差しの原基、などなど。アフリカの仮面“彫刻”やマダガスカルのお墓に立てられた“彫刻”もある。どれもが一つ一つものすごく面白い。加えて、古い棚や引き出しなどをうまく使って“什器”にしている。独特の雰囲気である。なんだか別世界に迷い込んだみたいだ。
 ついつい一つ一つに眺め入って、あげく長時間滞在してしまっていたらしい。
家人が疲れて椅子に座り込んでしまった。その姿を横目に、さらにあれこれ見入っていると、ねえ、岸田劉生を見る時間がなくなるわよ、ここだけで帰るつもり? と言ってきた。そういえば、シンデレラみたいに、家に戻らねばならぬ時間が決まっている。爺さんの女装シンデレラを思い浮かべて苦笑した。いただけない。
 後ろ髪を引かれながら(側頭部・後頭部にはまだ髪がある)、また来ればいいか、とステーションギャラリーへと移動した。それにしても、いいところを見つけたものだ。面白すぎるうえに、なんと、無料! 庶民の皆さんにあまねくお勧めしたい。私はまた行く。
つづく→

 

 

藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

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