藤村克裕雑記帳

色の不思議あれこれ011 2014-06-23

松本に行ってきた(2)

 旧制松本高校といえば、私の世代には何と言っても北杜夫。高校の頃出た『どくとるマンボウ青春記』。あの口絵に掲げられた北杜夫の写真にはあこがれたなあ。ぼろぼろの学生服と帽子。…かっこよかったなあ。私もわざわざ学生服を汚し、帽子を痛めつけたものだ。下駄で登校したり。そんなことなど思い出しながら、気を取り直し、人混みへと突入を開始した。通路の両側にテントが立ち並び、商品が思い思いに配されている。左側だけに注目していけば、やがて戻り道になり、最後は両側の店を見ることができるはず。
まず目に留まったのが、「COW BOOKS」のトラック移動古本屋。東京・中目黒のお店は時々覗いたりするが、トラックははじめて見た。アメリカ帰りの松浦弥太郎さんは、確かトラックの古本屋から始めたはず。つい物色をはじめてしまう。細部まで配慮が行き届いたおしゃれなデザインのトラック、クラフトフェアに集まる人たちの嗜好を読み込んだ巧みな品ぞろえ。さすが、と思わせる。しかし、本は重い。何も買わずに進む。
次に目に留まったのが、麻や絹の素材から製品までを扱っているお店。ワークショップもやっているとの告知。テントも大きいし、“展示”も巧みなのが目に留まる理由になっていると思った。何種類かの繊維を購入。丸くまとめた形状がきれいだと思った。
次に目に留まったのは、アクセサリーを扱っているお店。商品が小さいから、それを確認しようと人垣ができている。並んでいる物がとても面白い。が、それなりのお値段なので購入は断念。
そんなこんなで、会場を一回りするだけで半日以上を費やした。出店しているのは、焼き物、ガラス、ジュエリー、木工、皮製品、織物、染物、金属工芸などなど。正直、玉石混合だ。

 品物とは別に、什器の工夫がとても面白くてためになった。それらを運搬するとき、いかに軽く小さくまとめていけるか、展示にどう効果的に使えるか、など、どの出店者もよく考えて工夫している。それらを使った商品展示の良し悪しが作品の見栄えを確実に左右し、売り上げに影響している、と見た。台上にそのまま商品を置かずに一枚布を敷いてから置くとか、布の使い方が上手い店は、客を集めている傾向がうかがえる。
子連れのお店もあれば、店の後方にキャンプ用のテントを張っているお店もある。接客をさておいて食事中の人もいれば、楽器を奏でるのに夢中の人もいる。楽しいといえば楽しい。しかし、人が多すぎる。お店も多すぎる。それだけでもう私は疲れてしまった。
集まってくる人も、何か普段使いできる気に入ったものが欲しいという人ばかりではなく、自分もなにか作っている、とか、自分のお店で扱えるものはないか、というように、“仕入れ先”を探しに来たりしている人もいるように見える。疲れて通路わきにぐったりと座り込む人もいるし、軽食のために食事のとれるテントの長い列に耐えている人たちもいる。時折、“楽隊”が太鼓や笛を演奏しながら通っていく。会場整理の人たちも頑張っている。これだけの規模のフェアを運営するのはさぞ大変な事だろう。フェアの歴史などを関わってきた人たちが語ったのをまとめた本を買った。

藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

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