
色の不思議あれこれ091 2018-03-26
『Spectator』誌の「つげ義春特集」 その2

でも、いいのだ。というのも、ロザリンド・クラウスのその文は、「主の寝室」というエルンストの作品がコラージュではなく、ある教材カタログの一ページの中の複数の図像のうちエルンストにとって不要な図像を絵の具で塗って“消し”そこに床と壁を描き込んで作られたものだ、という指摘から論を展開したものだったはずだった。肝心なのはその先なのである。だから、ロザリンド・クラウスが自力でもとのカタログを探し当てていなくても、別にかまわない訳である。エルンストのコラージュは、じつはオーバー・ペインティングから始まった、その意味するところは? というところこそがその文の重要なところだったのである。しかし、その肝心の論の展開の内容をほとんど忘れてしまっている。ということは読んでいないのと同じなのである。資料を保管してあってもどこにあるか分からないのでは、ないのと同じだし、読んだことは覚えていても読んだ内容を忘れてしまっていては、読まなかったのと同じになってしまう。こういう事態に繰り返し直面しながら、たまってしまった資料の山にアップアップしている。というか、もうとっくに資料というべきではなく、物体というべきだろう。
あ、話が逸れている。ロザリンド・クラウスが探し当てたのではなくても、エルンストのコラージュ作品の元ネタをすべて探し出してしまった人(たち)はいるわけで、これはこれですごいことに変わりはない、と言いたかったのだ。
つづく→


立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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