画材のトリビア
小杉弘明

小杉弘明氏による画材のトリビアコラムを連載します。

小杉弘明 プロフィール

1954年 大阪出身。

1977年 大阪府立大学 工学部応用化学科卒。

元ホルベイン工業株式会社 技術部長。

現カルチャーセンター講師。

混色という魔界 Ⅳ
2025-06-26
 絵を描く人で数学の得意な人があまりいないというのは私の偏見であるかもしれない。苦手と言うより、「順列・組み合わせ」とか「微分・積分」とかいう数学の教科は文系に進んだ人達が学ばないので、分からなくてもしかたないのだと思う。これが混色とどう関係しているのかといえば、絵具の数と混色しうる組み合わせの数を計算するには「順列・組み合わせ」の考え方が不可欠だからだ。自分の所持している色でどういう組み合わせの数があって、どういう色ができるかという概念について、だれもあまり深く考えてはいないように思える。混色をするにあたって、例えばパレットに三原色しか入っていなかったとしたら、どれだけの組み合わせがあるだろう。これは言うまでもなく、赤と黄、黄と青、赤と青の3通りと、3色全部を混ぜ合わせる場合を含めて4通りしかない。これが六原色になるとどうなるだろう。とりあえず2色混合の場合を考えてみよう。